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ブライアン・ロベール

 

黒田裕子

 

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アーティスト

ディレクター

Q.

イギリスを拠点に活動するブライアンと、金沢を拠点に活動する黒田さん。プロジェクトパートナーになって2年目を迎えた今、それぞれ初めて会ったときの印象、振り返ってもらえますか? 

 

黒田

 

2年前、ブライアンに初めて会ったときの第一印象は、「とても背が高くて、軽妙に良くしゃべる人だなぁ」でした(笑)。でも同時に、その大きな笑顔の奥に秘められた、確かな信念も感じていました。実際、一緒にプロジェクトを進めていく中で、ブライアンの“繊細で温かい人間性”と“知性”、そして表現者としての“正義感”を感じて、会うたびに尊敬の念を抱いてしまいます。

 

僕も、裕子さんのことは“会った瞬間”から大好きになりましたね。というのも、僕はアメリカ出身なので、日本の方からすると、「この人、声でかいな」とか「押しつけがましいな」って思われがちなことも自覚していますし、僕が活動拠点にしているイギリスでさえも、初対面なのに個人情報をオープンにすると、引かれてしまうことがあります。でも裕子さんは、僕が最初から無茶な質問をしても怯えずに、受け止めてくれたんですね。それに、僕がつくる作品って、世間一般からみてもちょっと珍しいタイプの作品が多いんですが、僕やチームのメンバーを信じて「やりましょう!」って一歩を踏み出してくれた、そんな素晴らしい存在です。

 

ブライアン

 

Q.

ご自身で、“初対面で、個人的な情報をオープンにする”と言われたブライアンの姿勢ですが、それこそ“保守的”とも言われる金沢にて、“がん”というセンシティブな話題を投げかけようとしている「Fun with Cancer Patients」。一見すればネガティブに作用しそうなプロジェクトを、あえてここでやろうとしている意義は、どこにあるんでしょう。

 

僕なりに解釈する「カナザワ・フリンジ」は、アーティストたちが美術館だけじゃなく、まちの様々な場所を使うことで、「アートはどんな場所でも、美しさやインスピレーションを与えられる可能性を秘めている」ということを、発信していくプロジェクトだと思っているんです。その前提のうえで、「病気の人たちも“まちの一部”であり、切り離されている存在じゃないんだよ」ということを伝え、まちと関わっていくのが、「Fun with Cancer Patients」だと思っています。よくあるのは、「病を持っているなら、療養してからまた復帰しておいで」って言われることが多いということ。でも裏を返せば、「一般社会で暮らすには、“健康に何の問題もない”ことが前提だよ」と言われているに等しい、ということですよね。だけど、どんな人だって社会の一員であることには変わらなくて、“がん”だとしてもそれはただ、“健康という部分で問題がある”というだけ。哀れみとか悲しみとか恥みたいな、シンボルとしての対象じゃないんです。そういったアイデンティティを見せ合い語り合うことが、今、世界でも日本でも、そして金沢でも絶対的に必要なんじゃないかって思っています。

 

ブライアンの作品は、彼が言うように、必ず自分と他者、そして社会との関わりを持たせた作品が多いんですね。それに、どれも一度見たら忘れられないくらい刺激的な作品ばかり。といっても、単に疑問を呈したり、課題を突き付けたりするという意味ではなくて、人や社会との出会いに不可欠な“即興性”や“柔軟性”、“クリエイティビティ”が随所に散りばめられていて、まさにユーモアと知恵を併せ持ったブライアンそのもの、といった感じなんです。だからこそ、今回の「Fun with Cancer Patients」は、参加してくださるみなさんと会話を交わしていく中で、彼のポジティブさが周りに波及していき、金沢のまちと人にいいエネルギーが満ちていくといいと思います。そんな可能性を秘めたプロジェクトになることを期待しています。

 

黒田

 

ブライアン

 

Q.

つくられた“作品”を通じてではなく、アーティストの人柄や熱意、あるいは作品をつくる過程で育まれた関係性が伝播することで、まちが変わっていく。これは、“会話”を中心としたブライアンの作品ならでは、という感じがします。実際、これまでに印象的だった金沢での出会いはありましたか?

 

黒田

 

そうですね、印象的な出会いというよりもむしろ、このプロジェクトは「今関わってくださっている方々がいなければ、この作品は成立しなかった」という出会いばかりなんです。その中でも一番キーになるのは、『石川県がん安心生活サポートハウス つどい場はなうめ』と、そこで看護師をしている木村美代さん、そして今回のプロジェクトに参加表明してくださった、総勢50名の“金沢メンバー”の存在ではないでしょうか。はなうめは、ふらっと立ち寄れるオープンさが魅力で、日常的に多くの出逢いが生まれている居心地のいいサロンですし、木村さんもこのプロジェクトの主旨を即座に理解してくださって、今回のプロジェクトの“金沢メンバー”となる、約50名の方々と私たちを繋いでくれたんです。今年6月に、一部のメンバーのみなさんと合宿を行って、それぞれの体験や気持ちに耳を傾けながら、自分自身にも向き合い、がんの意味について考える時間を持ったんですね。それまで、金沢は“シャイな方が多いまち”という印象が強かったんですが、これほどまでに関心を寄せて集まってくださる皆さんがいて、しかも彼らが素晴らしい勇気と好奇心を持っているということに、ブライアンも私も本当に驚かされました。

裕子さんが言うとおり、彼らとの出会いはどれも“不可欠”な出会いでした。それに付け加えるならば、僕の発言と発想を日英通訳してくれる、金沢在住の橋爪真紀さんとロンドン在住のジョー・アランさん。そして、作品のコンセプトを空間やデザインとして具現化してくれるアーティストの入口衛さんと、プロジェクトの全てを記録し様々なサポートをしてくれる、写真家のクリスタ・ホルカさんでしょうか。がんや病気、死、障害といったものをめぐる会話は、文化や国ごとに全く違う捉えられ方をするからこそ、良き理解者であり協力者である“パートナーたち”の存在もまた、不可欠なんです。あと忘れていけないのが、“お好み焼き”かな!(笑) 相手との心の壁を取り払い、信頼を築く一番簡単な方法って、食べ物を分けるっていう行為だと思っていて、だからこそお好み焼きやたこ焼き、お弁当を一緒に食べるということがなければ、このプロジェクトは不可能だったんじゃないかなと思います。

 

ブライアン

 

Q.

世界的にみてもデリケートなテーマを扱いながら、言葉や文化の壁を越えて、たくさんの方と共につくり上げている協働制作プロジェクト。これぞまさに、アーティスト・イン・レジデンスの醍醐味ですよね。では最後に、お二人がこのプロジェクトを通じて期待することを教えてください。

自分の身体のことを誰よりもわかっている患者さん、誰もが知りたい専門知識をシェアすることができる医療関係者のみなさん、愛する人々への愛と彼らの勇気を伝えることができる家族のみなさん、それぞれ一人ひとりが、“誰かの心”を動かせる力を持っている存在だと思っています。人は、どうしても自分が病気になるまでは、病気のことは考えないようにするものですよね?でも、普段何気なく生きている日常生活の中に、病気を持った人々がいるということも事実だし、もしかしたらこれを読んでいるあなた自身が、同じように何かしらの“病気”と向かい合わなければいけなくなるときだってあるかもしれない。そのとき、“病気”という存在を許容することができて、少しは自分自身にも“自信”が持てるように。「Fun with Cancer Patients」が、そう思えるきっかけになれたら嬉しいなと思っています。きっと、美術館にあるどんな彫刻や絵にも負けないぐらい美しくて意味のある会話が、ここから生まれてくるんじゃないかな。

 

ブライアンが言うように、11月のイベント期間中は、参加者のみなさんたちと一緒に“がん”について会話をするパフォーマンスアートを展開しますが、実はその会話方法がちょっと変わっているんです。

でもひとつだけ言えることは、楽しみながらも“心身ともに居心地のいい空間”の中で行われるということ。これは、人が本音を語るうえで必要な空間づくりであるとともに、普段は“健康”や“福祉”という課題に取り組むことが少ない美術館においても、大切な気付きのあるチャレンジになると思っています。

「カナザワ・フリンジ」は、創作することの“本来の姿”と、金沢の“土地や人が持つポテンシャル”を探りながら、多様な生き方や考え方、在り方を許容していこうとするプロジェクトだからこそ、「Fun with Cancer Patients」に参加した誰もが、これまでとは違った自分に出会える体験になるといいですね!

 

 

黒田

 

ブライアン